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【医師監修】体のできものは粉瘤?見分け方や治療法を徹底解説

2025.05.01粉瘤

「体にできものがあり気になっている」「粉瘤なのかできものなのか区別がつかない」

粉瘤は炎症が起こり赤く腫れてくるとニキビなどと見分けがつきにくく、自己判断が難しい疾患です。早めに専門医の診察を受けた方がよいケースもあります。

本記事では、粉瘤の見分け方や受診すべき症状、治療法などについて詳しく解説します。

粉瘤の見分け方

粉瘤は、皮膚の下にできる良性の嚢胞性疾患で、角質や皮脂が内部に蓄積します。多くは痛みのないしこりとして現れますが、炎症を起こすと痛みや腫れを伴うことがあるため、注意が必要です。できやすい部位は、顔や背中、首、耳の後ろなどです。[1]

粉瘤には以下のような特徴があり、他の皮膚疾患と見分けることができます。

  • 皮膚の表面に小さな開口部(黒点)が見られることがある
  • 粉瘤は皮膚とつながっているため、触ると皮膚の下では動かない
  • 圧迫すると、悪臭を伴うドロドロした粥状の物質が排出されることがある

また、粉瘤は自然に消失せず、内容物を押し出しても嚢胞が残るため、一時的に小さくはなりますが治癒はしません。押し出すことで炎症を引き起こす恐れもあり、注意が必要です。

粉瘤と間違われやすいできものとの見分け方

粉瘤は見た目が似ている他の皮膚疾患との区別が難しく、誤認されるケースも少なくありません。ここでは、粉瘤とよく間違われる皮膚疾患の見分け方を解説します。

1.ニキビ

ニキビは毛穴の皮脂詰まりや細菌感染によって生じ、小さな赤い丘疹や膿を伴うことが多いです。一方、粉瘤は皮膚の深部にでき、より硬く長期間残る点で異なります。

また、ニキビは短期間で消失することが多いですが、粉瘤は自然に消えることはほとんどありませんし、徐々に大きくなることが一般的です。[2]

2.脂肪腫

脂肪腫は皮下脂肪の増殖によって生じる柔らかい腫瘤で、通常は痛みがなくゆっくり成長します。粉瘤は皮膚表面に開口部(黒点)が見られることがありますが、脂肪腫には開口部がありません。また、脂肪腫は線維化が進むと硬く感じることがありますが、基本的に粉瘤よりも柔らかいです。[3]

3.おでき

おできは、細菌感染による膿のたまった炎症性のニキビです。強い痛みを伴い、自然に破れて膿が排出されることが多いです。粉瘤も炎症を起こす場合がありますが、炎症のない粉瘤は痛みを伴わず、しこりが持続する点が異なります。[2]

4.ガングリオン

ガングリオンは、ゼリー状物質を含んだ嚢胞です。粉瘤とは異なり皮膚の表面には変化がなく、関節周囲に発生する点が特徴です。通常は無症状ですが、神経を圧迫すると痛みやしびれを引き起こすことがあります。

受診すべき粉瘤の症状

粉瘤は一般的に良性の皮膚腫瘍です。自然に治癒することはなく、以下のような症状が現れた場合は、早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。

1.痛みがなくても3mm以上のサイズになった場合

炎症の既往がない場合は、傷の目立ちにくい「くり抜き法」による治療を検討できるため、炎症を起こす前に受診することをおすすめします。しかし、小さすぎると麻酔で浮腫んだ時にどこを取るかわからなくなることがあるため、ある程度の大きさになってから受診するとよいでしょう。

2.痛みがある場合

感染や炎症を起こすと、痛みが生じることがあります。痛みがある場合、細菌感染や膿瘍の形成が疑われ、放置すると悪化する可能性があります。

3.赤みや腫れが広がっている場合

粉瘤が急に赤く腫れ上がり周囲の皮膚にも広がっている場合、感染が進行している可能性があるため、注意が必要です。炎症が悪化すると発熱を伴うことがあり、抗生剤治療や外科的処置を要するケースもあります。

4.繰り返し同じ場所にできる場合

同じ部位に何度も粉瘤ができる場合、根本的な原因を除去するために外科的な切除が必要になる場合があります。とくに、炎症を繰り返す粉瘤は感染のリスクが高くなるため、受診が推奨されます。[4]

粉瘤が悪性化(がん化)することはある?

粉瘤は一般的に良性ですが、極めてまれに悪性化(扁平上皮癌への変化)した症例が報告されています。

悪性化の頻度は非常に低く、粉瘤の診断でがんを心配する必要はほとんどありません。ただし、粉瘤が急速に大きくなったり形が不規則になったりする場合や、表面に潰瘍や出血が見られる場合は、念のため早めに医師の診断を受けることをおすすめします。[4]

粉瘤の治療方法

粉瘤の治療には、主にくり抜き法と切除法の2種類があります。

くり抜き法

くり抜き法は、小さな穴を開けて粉瘤の内容物と嚢胞を取り除く方法です。傷跡が小さくダウンタイムが短いのが特徴で、顔や首など目立つ部位に適しています。ただし、嚢胞が大きい場合や炎症の既往がある場合には適用できません。

写真:くりぬき後の状態

切除法

切除法は、粉瘤を周囲の皮膚ごと切開して完全に取り除く方法で、再発の可能性を低減できます。ただし、くり抜き法より傷がやや大きくなることがあります。切除法は炎症を繰り返す粉瘤や、サイズが大きい場合に推奨されます。[4]

治療方法の選択は、粉瘤の状態や部位に応じて医師が判断します。粉瘤の治療方法については「粉瘤」でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

切開排膿

炎症中の粉瘤の場合、炎症を引かせるために皮膚に切れ込みを入れて排膿します。粉瘤内の被膜や内容物は取れないため、2ヶ月以降に根治的な切除法が必要です。

ネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容の粉瘤治療の特徴

ネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容では、形成外科専門医が手術を担当。皮膚の切除や縫合は形成外科が専門とする分野であり、粉瘤を除去しながら傷跡がきれいになるよう丁寧に縫合していることが特徴です。体の部位ごとに適した糸の太さを選択し、縫合の跡が目立ちにくいよう配慮しています。

また、細い針を使用した局所麻酔によって痛みを抑える工夫をしており、患者さまの負担を軽減しています。粉瘤手術時の痛みについては「手術する前に粉瘤の手術の痛みが気になるあなたへ」でも詳しく解説していますので、こちらも参考にご覧ください。

粉瘤の治療費用

粉瘤の手術は、公的保険が適用されます。当院では日帰り手術を行っています。料金は部位とサイズで異なり、一番小さいサイズ(顔の場合2cm未満、体の場合3cm未満)の場合、1万円前後(手術当日、3割負担の場合)のお支払いです。

粉瘤の見分け方でお悩みの方はネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容へ

粉瘤は、ニキビや脂肪種、おできなど見た目が似ている皮膚疾患と間違われやすい疾患です。痛みや赤み・腫れなどがある場合、早めに専門医の診察を受けることが重要です。

ネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容では、保険適用で粉瘤の日帰り手術を行っています。粉瘤かどうか見分けがつかずお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。

当院の受診方法は、診察・施術のご予約方法をご確認ください。

【ネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容|吉武光太郎 監修】

【参考文献】

[1]Maity, J., Parwin, N., & Singh, R. K. (2021). Defining Epidemiology of Epidermoid Cyst: A Retrospective Case Study at RIMS Ranchi. Paripex Indian Journal of Research.

https://www.worldwidejournals.com/paripex/fileview/defining-epidemiology-of-epidermoid-cyst-a-retrospective-case-study-at-rims-ranchi_August_2021_5026409601_2802861.pdf

[2]Sethi, S. V., Marachapu, J., & Singh, D. (2023). An unusual presentation of epidermoid cyst as multiple skin nodules masquerading as neurofibroma. Indian Journal of Pathology & Microbiology.

https://journals.lww.com/ijpm/fulltext/2024/67040/an_unusual_presentation_of_epidermoid_cyst_as.32.aspx

[3] Asano, M., et al. (2021). A scoring system combining clinical, radiological, and histopathological examinations for differential diagnosis between lipoma and atypical lipomatous tumor/well-differentiated liposarcoma. BMC Cancer.

https://www.nature.com/articles/s41598-021-04004-1

[4] Jeon, S., Lee, S. Y., Kim, J., Jin, U., Kwon, S., Kwak, Y., & Kim, B. J. (2022). Clinicopathologic features of epidermoid cysts in the upper and lower extremities, including a case of malignant transformation in the palmoplantar region. Archives of Hand and Microsurgery.

https://www.handmicro.org/journal/view.php?doi=10.12790/ahm.22.0049

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