粉瘤(アテローム)はなぜできる?体質・生活習慣・ケアのポイントを紹介
2025.12.23粉瘤

「首や背中に小さなしこりを見つけて不安になった」という経験はありませんか?
もしかすると、そのしこりは粉瘤の可能性があります。痛みがないうちは放置しがちですが、そのまま放っておくとどんどん大きくなったり炎症が起こったりして、手術するケースも少なくありません。
今回は、粉瘤ができる原因やできやすい人の特徴、粉瘤の治療法や予防法などをご説明します。
粉瘤とは?

粉瘤(ふんりゅう)とは、皮膚の下にできる良性皮膚腫瘍の一種です。医学的には「アテローム」「表皮嚢胞(ひょうひのうほう)」と呼ばれています。
皮膚の中に袋ができ、その中に皮脂や角質が溜まっていく病気で、顔や首、背中、耳の後ろ、脇などの皮脂腺に多く発生します。衣類などで摩擦が生じやすい場所に多く発生する傾向があります。
触るとゴムボールな感触で、皮膚表面がふくらみ、しこりのように感じられることが特徴です。中央部には黒い点が見えることがあります。
初期段階ではかゆみや痛みなどの自覚症状はなく、「小さなコリッとしたものがある」くらいで気づくことが多いです。放置すると袋の中で細菌が繁殖し、炎症を起こして腫れや痛み、膿が溜まって破裂するケースもあります。
見た目は小さくても時間をかけて少しずつ大きくなり、自然治癒はしません。早めの手術治療がポイントになります。
粉瘤はなぜできる?

粉瘤は毛穴の奥に袋ができ、その中に皮脂や角質が溜まっていくことで生じます。
ここでは、粉瘤ができる原因を詳しく見ていきましょう。
毛穴の出口が詰まる
一般的によく知られている原因は、毛穴のつまりです1)。肌のターンオーバーが乱れると古い角質が毛穴の出口に溜まり、皮脂の排出が滞ります。
この状態が続くと、毛穴の奥で袋状のものができ、皮脂や角質が少しずつ蓄積して粉瘤を形成します。
皮膚への摩擦や刺激
粉瘤は、皮膚への摩擦や圧迫などの刺激を受け続けることで生じやすくなります。
たとえば、マスクや首回りに触れる服、下着のゴムなど、日常的に皮膚が擦れる部位などに発生しやすいです。摩擦や圧迫が続くことで皮膚表面の角質が厚くなり、毛穴の出口が塞がりやすくなるためと考えられます。
肌への刺激が皮膚の奥までいくと、表皮の一部が内部へ入り込み、粉瘤の袋が作られることがあります。とくに肌が乾燥してバリア機能が低下しているときや汗をかきやすい季節は、摩擦のダメージが大きくなりやすいです。
肌を清潔に保ち、締めつけの少ない衣服を選ぶこと、また同じ部位に刺激を繰り返し受けるのを防ぐことが粉瘤予防につながります。
ニキビやケガの後にできることも
粉瘤はニキビや小さなケガが起きた後にできることもあります。ニキビができると毛穴の奥で炎症が起こり、皮膚の構造が一時的に壊れます。
そのとき、表皮細胞の内側に皮膚が入り込むと袋ができることがあり、粉瘤の始まりになるといわれています。
粉瘤は足の裏や手のひらなど、毛がない場所にできることがありますが、外傷によって表皮の一部が皮膚の内部へ入り込んだ結果として発生すると考えられています2)。
「治ったと思ったらしこりだけ残った」「同じ場所に繰り返しできる」という場合は、粉瘤ができていることもあります。皮膚の再生力やケガの治り方には個人差がありますが、炎症が強い部分ほど粉瘤ができやすい傾向があります。
感染や炎症による粉瘤の悪化
粉瘤は最初のうちは痛みがなく、しこりに見えることが多いです。しかし放置しているうちに内部で細菌感染を起こすことがあります。
粉瘤が感染を起こすと袋のまわりに炎症を起こす細胞が集まってくることがあり、袋が破れて中の角質が周囲に出てきます。体は異物を排除しようとする働きが起こり、痛みや腫れを伴います3)。
袋の中には皮脂や角質など細菌にとっての栄養源が豊富にあり、細菌が繁殖しやすい環境です。とくに摩擦や刺激などによって袋の壁が傷つくと皮膚表面の常在菌が中へ入り、炎症性粉瘤に進行するケースがあります。
赤く腫れて痛みを伴う粉瘤の場合、皮膚が赤くなり、袋の中に膿が溜まって強い痛みを感じるようになります。この段階まで進行すると、切開して膿を排出する手術が必要です。
炎症後に袋の壁が体内に残ると再発するリスクが高くなるため、根本的な治療として袋そのものを取り除く「切除法」が行われます。痛い、腫れてきた、においがするなどの変化があったら、早めに医療機関へ相談してください。
粉瘤ができやすい人の特徴

粉瘤は誰にでも起こる皮膚トラブルのひとつですが、できやすい人やできやすい場所があります。
日常生活での刺激や生活習慣によって、粉瘤は発生しやすくなるのです。とくに汗をかきやすい人、皮脂分泌が多い人は注意が必要です。
皮脂分泌が多い体質
粉瘤は誰にでもできますが、とくに皮脂分泌が多い人、ターンオーバーが乱れやすい人は注意が必要です。
過剰に皮脂が分泌されると毛穴がつまりやすくなり、袋ができるリスクが高まるためです。また「忙しくてスキンケアを後回しにしてしまう」「寝不足が続いている」という人は皮膚のターンオーバーが乱れやすく、粉瘤の発生を高めると考えられます。
発症部位の特徴
粉瘤は、毛穴や皮脂腺の多い部分、摩擦や圧迫を受けやすい部位にできやすいです。
- 顔、首:皮脂腺が多く、メイクや汗、マスクなどで毛穴がつまりやすい。とくにあご下や耳の後ろなど、見落としがちな部分にできやすい傾向がある。
- 胸、背中:皮脂分泌が多く、衣類との摩擦や寝具との接触が多いため、日常的に摩擦を受けやすい。背中にきびをきっかけとして粉瘤が発症することもある。
- わき、お尻:下着や衣服による締めつけが強く、皮脂や汗がこもりやすい。蒸れによって雑菌が繁殖し、炎症性粉瘤を起こしやすくなる。
慢性的に皮膚がこすれる習慣がある
粉瘤は、皮膚が繰り返しこすれる部位にできやすい傾向があります。これは、摩擦や圧迫が肌のバリア機能を低下させ、毛穴の出口を塞ぎやすくするためといわれています。
たとえば、首回りに密着するマフラーやシャツ、下着のゴム、あごや頬に当たるマスクなど、日常的なこすれが積み重なることで皮膚が刺激を受け、袋状のものができやすくなると考えられています。
とくに汗をかきやすい時期や乾燥する時期は、摩擦の影響を受けやすいです。
ホルモンバランスや代謝
ホルモンには皮脂分泌をコントロールする働きがあります。思春期・妊娠・更年期・ストレスが多い時期などにホルモンバランスが乱れると過剰に皮脂が分泌され、毛穴のつまりが起きやすくなると考えられています。
思春期のホルモン刺激によって皮脂分泌が過剰になり、粉瘤の袋の成長を刺激する可能性があると症例報告の考察の中で触れられています4)。
またターンオーバーの乱れにより、古い角質が肌の表面にとどまりやすくなり、毛穴の出口を塞ぐことがあります。
運動不足、冷え性、睡眠不足なども代謝を下げる原因のひとつです。ニキビなどの吹き出物が増えた、最近肌のザラつきが気になるという方は、肌のターンオーバーが乱れている可能性があります。
粉瘤を放置するとどうなる?

痛みがないというだけで放置してしまうことが多い粉瘤ですが、実はそのままにしてしまうと炎症や感染、再発のリスクがあることを知っていますか?
はじめのうちは小さなしこりに思えるかもしれませんが、皮膚の内部では角質や皮脂が少しずつ溜まり、袋自体が大きくなっていきます。
自然に治ると思って放置すると、痛みや臭いの発生、再発を繰り返すなどのトラブルを起こすかもしれません。
炎症・感染を起こす
粉瘤が大きくなり、内部で細菌繁殖が起きると「炎症性粉瘤」と呼ばれる状態に進行します。炎症性粉瘤は袋の中に膿が溜まり、赤く腫れて痛みを伴います。
中には、熱をもったように熱く感じる方もいます。炎症が起きた場合、メスを入れて膿を出す、抗生物質の服用などの治療が必要になることもあります。
一般的に炎症性粉瘤になると強い痛みを伴うこともあり、袋の切除手術を行えないため、まずは炎症を落ち着かせる処置(切開排膿)を取ります。
破裂すると臭いや膿が出ることも
粉瘤を放置した場合、袋の中で角質や皮脂が少しずつ増え、「腫れて痛い」「破れて中身が出てきた」といった状態になることがあります。
破裂したときに出てくる内容物は、角質や皮脂が酸化したもので強い臭いがあることが特徴です。このとき、一時的にしこりがしぼんで小さくなったように見えても、袋は皮膚の中に残っているため、再び中身が溜まって再発する場合があります。
粉瘤は初期の段階で袋ごと取り除くことで、破裂や再発を防ぐことが可能です。
再発リスクが高まる
粉瘤は治療しても再発することがあります。主な原因として、袋の壁の一部が皮膚の中に残ってしまうことが挙げられます。
粉瘤は、袋ごとすべて取り除かない限り、根本的な治療にはなりません。また、炎症が強い状態で膿だけを排出すると、袋の壁が残っているため、数週間後~数か月後に再びしこりが出てくることもあります。
また、傷跡の下で新しく袋が作られることもあり、「治ったと思ったらまたしこりができた」というケースは少なくありません。再発を予防するためには、炎症が落ち着いたら袋ごと取り除く手術を行うことが大切です。
粉瘤の治療方法
粉瘤の治療法は、大きく分けて2種類あります。
炎症がない場合
炎症が起きていない場合は、治療に適している状態です。袋の形が整っていて、周囲の組織とも癒着していないため、袋ごと取り除くことができます。
一般的には、「くり抜き法」と呼ばれる手術を行います。この治療は、中央の黒い点に小さな穴を開けて袋ごと取り除く方法です。切開範囲が狭く、縫合せずに治療が完了することもあります。傷跡が目立ちにくく、術後の回復も早いことが特徴です。
粉瘤は「痛みがないから様子を見よう」と思いがちですが、炎症が起きる前に治療をすることで患者さまの負担が少なく、再発のリスクも抑えることができます。
炎症がある場合
炎症が起きている粉瘤は、「炎症性粉瘤」と呼ばれます。この状態になると内部に膿が溜まっているため、切開して膿を出す処置が必要です。
炎症が起きている状態で無理やり袋を取り除こうとすると周囲の皮膚がダメージを受け、袋の一部が残って再発しやすくなります。そのため、抗生物質の内服や塗り薬などを使用し、腫れを落ち着かせた後に袋ごと取り除く手術を行います。
炎症が強い場合は麻酔が効きにくく、痛みが出やすいため、熱をもっている状態や腫れがわかった時点で早めの受診がポイントです。
粉瘤の予防方法

粉瘤は、一度できてしまうと自然治癒しません。スキンケアや生活習慣で粉瘤ができにくい肌環境に整えましょう。
皮膚を清潔に保つ
肌を清潔に保つことは、粉瘤の基本的な予防のひとつです。古い角質や汗、皮脂などが毛穴に溜まっていくと袋のもとになるつまりが生じやすくなります。
入浴時にはボディーソープなどでよく泡立て、やさしく洗いましょう。ナイロンタオルなどのこすり洗いは推奨しません。また、皮脂を過剰に取りすぎると毛穴つまりを悪化させるおそれがあります。
これは、皮脂を取りすぎることで肌が乾燥を補うために皮脂分泌を増やすためと考えられます。洗ったら十分に保湿して肌にうるおいを与え、乾燥を防ぐことも大切です。
摩擦や刺激を減らす
日常的な摩擦や圧迫による刺激は、粉瘤の原因となります。マスクやリュックの肩ひも、下着のゴムなどで同じ場所に刺激を与え続けると皮膚がダメージを受け、皮膚の内部で袋ができやすい状態になります。
皮膚に直接あたる下着類などの素材を見直してみると良いでしょう。たとえば、ゴムがきつい下着はソフトタイプのものにする、衣類のタグはカットすることなどが考えられます。
また、できるだけ通気性のよい服を選び、締めつけを避けましょう。皮膚が乾燥していると摩擦の影響を受けやすくなるため、保湿ケアもしっかり行うことをおすすめします。
ニキビや炎症を放置しない
ニキビや肌荒れなどの炎症は、粉瘤のはじまりになることがあります。これは、炎症が強くなっていくと表皮の一部が皮膚の奥に入り、袋状の構造を作ることがあるためと考えられています。
そのため、ニキビや炎症は早めにケアすることが大切です。日常的な肌トラブルを悪化させずに早めに対処することが粉瘤の予防につながります。
粉瘤は初期段階での治療がおすすめ
粉瘤は皮膚の中に袋が残る限り自然治癒せず、角質や皮脂が溜まり続けて徐々に大きくなります。放置すると破裂や炎症を起こしやすく、基本的に炎症時は手術を行いません。
小さいうちに受診すれば袋をきれいに取り除け、傷も小さく治りが早い上、再発も予防できます。
一時的に小さく見えても袋が残れば再び大きくなるため、自己処置や市販薬で対処することは避けましょう。「小さなしこりがある」と気づいたら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
ネス駒沢クリニックの治療の特徴
当院では、形成外科専門医が手術を行っています。形成外科専門医は、皮膚や皮膚の構造に熟知し、できるだけ傷跡が目立ちにくいように縫合する技術をもっています。
粉瘤は、基本的に自然治癒しません。皮膚を切開して袋ごと取り除くことで、再発リスクを下げることができます。当院では、見た目にも配慮した治療を目指して手術を行っています。
ネス駒沢クリニックの粉瘤治療について、さらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
費用
粉瘤の手術は保険適用です。
一番小さいサイズ(顔は2cm未満、体は3cm未満)で3割負担の場合、当日は1万円前後になります。
よくある質問

Q.粉瘤は自然に治りますか?
A.粉瘤が自然に治ることはありません。原因となる袋が皮膚の内部に存在し、自然に消えることがないためです。
一時的に小さくなることはありますが、袋があれば皮脂や角質が溜まっていき、再発します。痛くないからと放置するのではなく、痛くなる前に医療機関で手術することがおすすめです。
Q.粉瘤を潰してもよいですか?
A.粉瘤を潰すことは避けてください。無理に潰すと内容物が皮膚の中で広がり、感染や炎症を引き起こすことがあります。
破裂すると強い痛みを伴い、臭いを放つことがあります。破裂した粉瘤は完全に袋を除去できないことがあるため、再発リスクが高まります。
Q.痛みがあります。手術はできますか?
A.痛みがある場合の手術は行なっていません。
炎症を起こしている可能性が高いため、皮膚を切開し、膿を排出した後に手術をしています。まずは一度ご相談ください。
粉瘤が気になる方は、ネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容へ
粉瘤は、皮膚の下に袋ができ、その中に角質や皮脂が溜まって起きる良性皮膚腫瘍です。はじめは小さくても少しずつ大きくなり、放置すると炎症や痛み、臭いを放つこともあります。
大切なのは、痛みがないうちに受診することです。炎症がなければ、くり抜き法などで摘出でき、再発リスクも抑えられます。
一方で、炎症が起きてからでは治療が難しくなります。普段の生活では皮膚の清潔を保って清潔や刺激を減らし、ニキビや炎症を放置しないことが予防につながります。
「小さなしこりがある」「もしかしたら粉瘤かもしれない」と思った方は、当院へお気軽にご相談ください。
【ネス駒沢クリニック 形成外科・皮膚科・美容|吉武光太郎 監修】
参考文献
(1)Overview of epidermoid cyst
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6732711
(2)Pathogenesis of Plantar Epidermal Cyst: Three-Dimensional Reconstruction Analysis
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4737825
(3)Pathogenesis of Plantar Epidermal Cyst: Three-Dimensional Reconstruction Analysis
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4737825
(4)Epidermoid cyst: Report of two cases
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5051311



